研究課題
近年、計算機やインターネットの発達により、例えば請求書や契約書といった重要文書の電子化やコンピュータネットワーク上でのやり取りが盛んに行われている。しかし、送信者が送ったことを主張し、受信者は受け取っていないことを主張した場合、どちらかが嘘をついているのかを判断できない。例えば通常の郵便では、配達証明付きのサービスを利用することで、この問題を回避することができる。電子取引においても、信頼できる第三者を介することにより、同様のサービスを行なうことができるが、第三者の擁立の困難性やコストを考えると、第三者を介さずに送受信者間で取引出来るのが望ましい。本研究では、暗号プロトコルを利用してこの機能を実現することを目的としている。本年度は、平成22年度に設計し実装したプロトタイプについてまとめ、ドイツで開かれた国際会議SAINT 2011に投稿し採録され、発表した。その内容は以下のとおりである。まず、段階的秘密交換プロトコルが高コストである割に安全性に寄与していない部分を指摘した上で、段階的秘密交換プロトコルを使用しない設計を提案した。安全性については、即座に不正を見破ることが出来るという制約を緩め、最終的に相手の不正を第三者に証明できればよいものとした。これにより、プロトコルの簡単化と計算コストの削減を達成した。また、受領証を陽に定義しない設計としたため、送信者側の全探索による不正を原理的に排除した。次に、このプロトコルを実装し性能を評価した。実装モデルは以前の実装と同じものを用いた。実装にはJAVA言語を用いた。5つのテストファイルを用いて研究室内のLANで通信実験をし、(i)送信ファイルの暗号化、(ii)プロトコルの実行にかかる時間をそれぞれ計測した。その結果、本実装では30MB程度のファイルを扱うことができることを確認できた。
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電子情報通信学会論文誌
巻: Vol.J94-B,No.10(招待論文) ページ: 1246-1260
巻: Vol.J94-B,No.10(研究速報) ページ: 1383-1388
http://www.net.ist.i.kyoto-u.ac.jp/ja/index.php?%CF%CO%CA%B8