研究概要 |
本年度では,オープンサイエンス指向の情報基盤システムを構築するにあたり,その核となる技術の一つである,反応系の自動設計に焦点を当てて研究を推進した。より具体的には,我々がこれまでに研究を行ったきたDNAとその化学反応を利用した論理ゲートを自動的に設計するようなプログラムの開発を行った.この自動設計プログラムでは,DNAからなる構造体が適切な文字列とそれらから構成される木構造でモデル化される.この自動設計プログラムにより,ANDゲート,ORゲートなどの各種論理ゲートを構築することができ,さらに,これらが実際に動作することを化学実験により確認した.また,論理ゲートだけではなく,オートマトン(入力の順序によって出力が変化する状態機械)の設計にも成功しており,これも化学実験によって期待通り動作することが確認されている.この自動設計プログラムにより,従来は人手で試行錯誤的に設計せざるを得なかった反応系を,より厳密な反応速度論に基づいたシミュレーションにより自動設計できることが示された.これは,単に人間の労力を削減するというだけでなく,複雑すぎて人間では設計できないような反応系を設計・構築するための方法論を提示することができたと言える. 上記に加えて,合成生物学の学生コンテストであるiGEM(the Intenational Genetically Engineered Machine competition)に関して分担者の木賀にヒアリングを行うと同時に,木賀らが率いるチームに大学院生を派遣し,iGEMの実態調査を行った.その結果,iGEMで提供されているデータベースは,データの粒度・信頼性が一様ではないため,あまり有効に活用されていない実態が明らかとなった.従って,次年度ではデータの粒度・信頼性を担保するような情報共有システムの設計・構築に焦点を当てて研究を推進していく予定である.
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