研究概要 |
本年度は,カメラペンシステムを構築する上で中心となる処理アルゴリズムの開発を行った,具体的な成果は以下の通りである. (1) 紙指紋の利用: 紙表面の凹凸を感知し,それに基づいてペン先の軌跡を復元する手法を考案した.具体的には,カメラで捉えたフレーム画像に対して,SURF(Speeded Up Robust Features)と呼ばれる特徴量を抽出し,それをフレーム間で照合することにより,軌跡を復元するものである. (2) 文書画像検索の改良: もう一つの軌跡復元手法として,文書画像検索に基づくものがある.これは,ペン先のカメラで捉えた画像をクエリとして,文書画像データベース中のどの文書のどの場所なのかを特定する技術である.検索の安定性を増すため,連結成分の面積比の順位などの新しい特徴を導入した. (3) データベース拡張・クエリ拡張: 検索の安定性を増すもう一つの方法は,カメラで捉えた画像の幾何学的歪みに対処することである.対処法として,データベース拡張,クエリ拡張の2つを提案した.データベース拡張とは,幾何学的歪みを受けた画像を予めデータベースに格納しておく手法であり,クエリ拡張とは,クエリの画像をデータベースに近づけるべく,種々の幾何学的変形を与える処理である. (4) 処理の統合: 紙指紋を利用した軌跡復元は,ペンの相対的な軌跡がわかるものの,どの文書のどの部分への書き込みかの手がかりを得ることはできない.一方,文書画像検索による軌跡復元では,文書の部分は特定できるものの,紙指紋では問題とならない空白への書き込みには対応できない.そこでこれらを統合することによって,問題を解決した.統合に際しては,トラッキング,モザイキング,再出現認識という3つの技術を導入した. (5) カメラペンシステムの試作: 実際にカメラベンシステムを試作し,実験により有効性を検証した.
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