研究概要 |
本年度は,誤差を伴う観測要素値から高速に欠測要素値を含む大規模半正定行列全体を高精度に推定する手法を探求するため,まず 1.n次元観測ベクトルから,強い対象間関係を表す部分ベクトルを,計算幾何学的原理に基づき0(logn)の計算量で切り出す高速検索手法の検討を行った.これまで範囲問い合わせやk近傍問い合わせ問題において,強い類似性を有する対象同士を高速検索するアルゴリズムが種々開発されているが,ここではより大規模な観測ベクトルが表わす潜在的高次元空間に存在する対象同士の類似性を,次元の呪いと呼ばれる問題を回避して効率的に検索する手法の検討を行った.これと並行して, 2.切り出した各n次元部分ベクトルに含まれる誤差を伴う観測要素値から,欠測要素値を含む期待値を,高精度,高速に推定する手法の検討 を行った.提案者等は,既に半正定主小行列に含まれる正確に観測された要素値から残りの欠測要素値を高精度,高速に推定する手法の見通しを得ているが,誤差を伴う観測要素値も含めて半正定主小行列全体を得る推定規範を新規に考察する必要があると考えた.本手法の検討には,データマイニング分野の知見のみでなく,量子情報計算分野で従来採られてきた状態密度行列推定手法の知見も取り入れた.更に, 3.以上のようにして得た個々の推定部分ベクトルを重ね合わせて,目的とする大規模ベクトル期待値を構成する手法の検討 を行った.これには2で推定した多数の部分ベクトルから,大規模観測ベクトル全体を構成する原理が求められるが,初年度は,主に誤差や欠測を伴う大規模観測ベクトル集合から,その期待値を高速かつ高精度に推定する基礎手法を構築することを目指し,その見通しを得た.これらの手法検証には,各種条件を制御して人工的に作成したデータを用いた.
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