研究概要 |
近年,情報通信のインフラの整備が急速に進められたことにより,インターネットを利用したディジタル音楽コンテンツの利用が盛んになっている.ディジタル音楽はその特性上,完全に複製することができるため,違法コピーや違法配信などを防ぐ著作権保護技術の確立が急務となっている.そこで,ユーザーには知覚されないように,著作権情報を"透かし情報"として音楽情報自体に埋め込む要素技術(電子音響透かし)に注目が集まっている.本研究では,申請者によって既に提案された"蝸牛遅延を利用した電子音響透かし法"に対し,電子音響透かし法として要求される三つの条件(検知不可能性,秘匿性,頑健性)に基づき,提案法の透かし情報の埋め込み限界量を主観・客観評価により調査し,情報ハイディング技術としての応用可能性の範囲を明らかにする.そのため,(1)現提案法の透かし情報の埋め込み限界の調査,(2)透かし情報埋め込みを構成するモデル構成の改良による埋め込み限界の向上,(3)埋め込み情報のブラインド検出法の実現に取り組む.本年度は,課題(1)と(2)に取り組んだ.課題(1)では,現提案法の埋め込み限界量を調べるために,4~8192bpsの範囲で情報埋め込みした場合のSTEP2001の指針と申請者の既報論文で利用した総合評価実験(ヒトを対象とした知覚実験とITU勧告に基づくPEAQ評価,各種客観評価実験,ビット検出率,各種信号処理に対する耐性試験,StirMarkベンチマーク)を行った.その結果,検知不可能性と頑健性の条件を満たす条件下では,128bpsが埋め込み限界であることを明らかにした.次に課題(2)では,提案法のアーキテクチャを2段の基本型からn段の並列型に拡張することで,埋め込み限界の拡張を狙った.課題(1)と同様の評価を行ったところ,8段の並列型で埋め込み限界を3倍まで拡張できることを明らかにした.
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