研究概要 |
本研究の目的は,左右眼網膜像の縦方向の違い(垂直視差)が空間認識及び頭部・眼球運動制御に果たす役割を明らかにすることである.具体的には,垂直視差の分布及びその動的な変化と,知覚的方位と左右方向の頭部・眼球運動との関係を実験的手法により定量的に明らかにし,垂直視差情報処理の機構を生理学的,心理学的知見を考慮してモデル化することを目標としている.平成21年度においては,実験装置を作成し,静的な刺激に向けた頭部・眼球運動における垂直視差の与える影響を検討することを目的とした. 平成21年度においては,当初の目的通りに,実験装置を構築し,主に静的な刺激を用いて,まず頭部運動に与える垂直視差の影響を検討した.具体的には,被験者に垂直視差を持った刺激に対して頭部を向けるというタスクを課し,その際の頭部運動をポジションセンサにより計測した.その実験のなかで,垂直視差量,刺激の空間的形状や密度,固視点の有無などが変数であった.その結果,特定の被験者,条件において,垂直視差が頭部運動に影響することが示された.この結果は,他に報告がなく新規性が高く,視差処理過程の解明において非常に重要な知見であると言える.この成果は,国内研究会2件(論文付口頭発表),国内学会1件(口頭発表),国際学会1件(ポスター発表)で報告した.現在は,頭部運動に影響する垂直視差の条件を精査するとともに,動的な頭部運動および眼球運動に与える垂直視差の影響を調べるため実験の準備中である.そのために,装置の改修,ブログラムの制作等を行っている.また,21年度に行った研究成果を学術雑誌に原著論文として投稿するための準備も進めている.
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