オリジナルの対象が持つ様々な感性的な特徴が損なわれていないと利用者に感じられるような品質で、マルチメディアコンテンツの生成・蓄積・提示を実現するためには、これに関わる感性情報処理手法を、使用するインタフェース機器、サービスの利用形態、生成・表示するコンテンツなどの諸特性に適合させて総合的に制御する必要がある。 H21年度には、マルチメディアコンテンツのマルチモーダルな様々な提示方法に対する感性的等価性の概念を詳細化すると共に、これを精密に計測・分析するための枠組みを検討した。また、感性的等価性のモデルを利用して、情報通信環境の制約と共に個々の利用者の感性的な特徴にも適合しうる感性的QOSの技術体系の全体像を考察し、これらの課題を実現していくための具体的な方法論を検討した。 具体例として、金属光沢や反透明感などの質感を対象に、人間が主観的に質感を知覚する過程のモデル化を試みた。本研究では、静止画や連続写真から取り出したコントラスト(非線形特徴)に基づく画像特徴量のヒストグラム歪度を用いた判別学習で、非常に高精度に質感を識別する手法を開発した。NTTの本吉らの手法は輝度分布のヒストグラムの歪度などの広域的な特徴量に基づく識別法であるが、我々は局所的な視覚神経系の回路を模した特徴量で、かっ、より高い判別性能を得ることができた。
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