本研究では「感性的効果の等価性(感性的等価性;様々なマルチメディアコンテンツから人間が受ける物理的信号・生理的刺激・心理的イメージの各階層での類似性)」の概念で情報通信工学と感性工学の両者に横断的な技術体系の構築を目指している。この技術の典型的な事例としてマルチメディアコンテンツの提供サービスを取り上げ、感性的等価性の考え方を導入したQOS制御の仕組み(感性的QOS)を実現し、利用者に心理的に同等の効果を与えられることを保証しながら、現実の計算時間や解像度・インタフェース機器の制約の下で、より安いコスト(物理的により情報量の少ない映像の生成・提示)で、高インタラクティブ性・高臨場感を実現する手法を開発する。また、利用可能な機器の制約の中で、最大限にコンテンツの高品位化が感じられるようにするための手法を開発する。 H23年度は、マルチメディアで構成されるコンテンツのマルチモーダルな表現と感性的等価性の計測・モデル化技術を開発した。具体的には、コマーシャル映像やショートムービーを題材に、対象の特性、情報の受け手にどのような生理的、感性的な効果の類似・相違を生じさせるかを詳細に計測・モデル化することを試みた。また、映像提示とBGMによる空間演出のシステムを15平米の実験室に構築し、これらの組み合わせにより、異なった室内イメージを被験者に感じさせ、物理的な刺激の変化に対して、人間の生理的、感性的な状態の変化を計測した。
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