初年度(21年度)には、主に専門知識の無い消費者がどのようなミスリードをされるのか、また、海外において、専門知識を移転する社会システムにはどのようなケースがあるのかについて検討を実施した。これにより、消費者と専門家との間には、かなりの知識ベース格差があること。また、消費者自身が、まだこのことを問題と捉えていないため、まずは問題意識を普及させる戦略が必要であること。更に、社会システムの構築には、両者を結ぶ専門家の存在が不可欠であるが、それを実現するシステムの構築は、特定の担当者のメインの事業的には難しいため、現在の日本では学会等の活動を通じて広げることが適切であることが判明した。22年度はこれを受けて、日本での専門的ナレッジトランスファー社会システムの可能性に関して、関係者との議論を通じて検討を実施した。当研究の目的が、情報システムの構築よりも、専門家から消費者への知識移転を社会的に構築することであるため、人間のコミュニティを生み出すことをメインに活動を行った。その結果、専門的な情報をいかに一般の国民に正しく伝えることが重要であるかということに興味・関心をもつエキスパートとの人的ネットワークが構築された。そのネットワークは、副会長として新たな学会(人間情報学会)、分科会を設立することにより具現化され、より定期的に消費者の立場に立った技術のあり方について、議論を積み重ねるベースを作り、メンバー間の問題意識も徐々に合致してきたと思われる。この動きを促進するために、学会における講演会に関しても、異分野の専門家が議論することを意識した構成を心掛けている。今年度は主に学会をゼロから広める活動を実施したが、来年度は学会において論文執筆により問題提起する予定である。
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