近年の機能的磁気共鳴画像(fMRI)研究などから、ヒトの脳は、安静時でも内側前頭前野や下頭頂小葉といった特異的な神経ネットワーク(デフォルト・ネットワーク)が同期しながら信号変化を引き起こしていることが明らかとなってきた。しかしながら、その機能的な意味は未だ良く分かっていない。本研究では、未だ明らかでないデフォルト・ネットワークの機能について、多角的に脳機能実験解析を行い、これを明らかとする。これまでの研究で、開眼安静および閉眼安静のみの課題に加えて、腕を交差させるという姿勢の変化を加えた課題を用いた実験を行うことで、腕を交差させるだけで左下頭頂小葉およびその周辺の領域における活動が増加することを発見し報告した。今年度もこれまでのfMRIによる機能結合解析、MEGによる機能結合解析、TMSによる効果の評価、障害者対象研究を継続した。こうした中で、fMRI用いて腕交差に伴い強い活動が見いだされた左下頭頂小葉上部をシードとして機能結合解析を行ったところ、デフォルト・ネットワークと、デフォルト・ネットワークには含まれない前帯状皮質等の領域に分布することを見出した。腕を交差するだけで活動する脳領域は、デフォルト・ネットワークと、それ以外のネットワークとのゲートウェイとしての機能を持つ可能性がある。
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