わが国で社会調査を実施する場合においては、これまで住民基本台帳や、選挙人名簿などに基づくサンプリング台帳を用いた個人標本抽出が標準的な方法として位置づけられてきた。しかしながら、平成18年の「住民基本台帳法の一部を改正する法律]の成立や個人情報への関心の高まりは、個人情報の閲覧を制限する条例を制定する地方自治体の増加などを引き起こすなど、従来、用いられてきた社会調査法が適応不能となる現状が生じている。そうした背景と問題意識をふまえて、本研究の全体構想としては、「近年の社会調査を取り巻く環境の急激な変化に適応する、新たな社会調査の計画を具体的に提案する」ことである。そこで本研究では、新たに社会地区類型(Geodemographics/ジオデモグラフィクス)の概念と手法を活用することを通して、サンプリング台帳を必要としない社会調査法を提案し、その有用性を実証的に解析することを目的とした挑戦的な研究として位置づけられる。平成21年度の研究においては、社会地区類型(Geodemographics/ジオデモグラフィクス)の概念と手法を活用した社会調査法の理論的検証を行なうとともに、実際の調査実施に関する課題の整理を行なった。これらの知見を基盤として調査デザインの設定と調査票を作成するとともに、実際に調査を実施したものである。なお、次年度においては、収集された調査データを踏まえて、新たな社会地区類型を活用した調査手法の有用性についての具体的な検討を行なっていく予定である。
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