本研究では、シナプス近傍でのタンパク質の挙動を明らかにするために、ガラス面直上にシナプスの膜構造を形成させて、受容体等の振る舞いを、全反射顕微鏡を用いて一分子レベルでリアルタイム記録することをめざしている。ビオチン化牛血清アルブミンとストレプトアビジン等を用いて、ニューレキシンでコートしたガラスを用意した。そして、その上で海馬神経細胞を培養することによって、ガラス面に対してグルタミン酸作動性興奮性シナプス後部構造を形成させることを試みた。AMPA型グルタミン酸受容体に蛍光タンパク質フルオリンを融合したタンパク質、およびシナプス後膜に局在する足場タンパク質PSD95に蛍光タンパク質RFPを融合したタンパク質を作成し、神経細胞で発現させた。その神経細胞をニューレキシンコートしたガラス面上で培養したところ、ガラス面直上にPSD95の蛍光シグナルが認められ、シナプス後部構造が形成されたと考えられた。そうした神経細胞部位周辺のフルオリンの蛍光シグナルを全反射顕微鏡を用いてリアルタイム記録したところ、AMPA型グルタミン酸受容体一分子に由来すると推定されるシグナルを検出できた。そのシグナルはPSD95が存在しない部位では動き回っていたが、PSD95が存在するシナプス後膜部では静止する傾向が認められた。以上から平成21年度の研究で、シナプス後部構造をガラス面上に形成させ、そこでのグルタミン酸受容体の挙動を一分子レベルで観察することができるようになったと考えている。
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