今年度は、これまでのニワトリ、カメ、マーモセット胎仔由来の抑制性神経細胞の解析に引き続き、ヒトの抑制性神経細胞の解析を試みた。そのためにまずヒトiPS細胞からヒト由来の抑制性神経細胞の誘導を試みた。すなわち、既に樹立されているヒトiPS細胞を接着培養法によってまず終脳の神経幹細胞へと分化させ、その後これまでのマウスでの解析より大脳新皮質抑制性神経細胞の分化誘導に必要であることが示されているSonichedgehogを培地中に添加することで終脳の神経幹細胞を大脳新皮質抑制性神経細胞の幹細胞へと誘導することを試みた。その結果、ほぼ全てのiPS細胞を終脳の幹細胞特異的なマーカーを発現する細胞へと分化誘導することに成功した。さらにこれらを大脳新皮質抑制性神経細胞の幹細胞へと誘導するために、培養液中にSonichedgehogを添加してみたところ、少数ではあるが大脳新皮質抑制性神経細胞の幹細胞特異的マーカーを発現する細胞を誘導することができた。また、それらの細胞を長期間培養したところ、抑制性神経細胞のマーカーを発現する細胞を分化誘導することができた。今後、これらの細胞をこれまでのニワトリ、カメ、マーモセット胎仔由来の抑制性神経細胞と同様に赤色蛍光タンパク質であるmCherryでラベルし、比較のためGFPを発現する胎生13.5日目マウス胎仔大脳基底核原基細胞と混合して野生型の子宮内胎生13.5日目マウス大脳基底核原基へと移植することにより、それらの挙動を比較することができると期待される。
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