脳機能の左右差はヒトではよく知られているが、その分子的基盤は、ほとんど分かっていない。また、マウスを用いた左右差の分子基盤を探る実験でも、神経伝達物質受容体の定量等のボトム・アップ的アプローチによるものが殆どである。さらに、体軸を形成する遺伝子のスクリーニングは数多いが、それらはすべて動物の初期発生期に誘導される分子に限られており、成熟した個体に対する徹底した遺伝子の網羅的スクリーニング皆無であった。 哺乳類左右脳の遺伝子発現の違いを解明するために、次世代DNAシークエンサーによる遺伝子解析を提起したが、平成21年度は、シークエンサーにかけるサンプルの収集に終始した。具体的には、成獣大脳辺縁系海馬のサンプルを調製した。サンプルは、RNAの劣化を最小限にするために、トライゾール液に浸潤させ、-80度で数量が揃うまで冷凍保存した。また、理化学研究所オミックス基盤領域(鶴見)では、CAGE(Cap Analysis of Gene Expression)解析の最適化を図り、10月にプロトコルが定まった。それら収集した資料よりRNA抽出を試行したところ、RNAの純度は高いのもの、サンプル量が充分でないこと判明した。したがって、平成21年度後半は、さらに数多くの個体から、左右海馬サンプルの調製をおこなった。現在、新しく収集した資料を加えてRNAを抽出している段階であり、平成22年度には網羅的な遺伝子のスクリーニングの結果が分かることが期待される。
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