研究課題
本研究課題では、Creを細胞種特異的に発現する遺伝子改変動物とレンチウイルスベクターを組み合わせることで、ある特定の神経細胞群にのみ目的遺伝子を発現させ、単一神経細胞の入出力特性を定量的に記述することを目的とする。昨年度は(a)2種の遺伝子(X&Y)を共発現するレンチウイルスベクターの開発を行った。Tet応答性・双方向性プロモーター(TREB)、脳心筋炎ウイルス由来のIRES、手足口病ウイルス由来のF2A配列の比較検討を行ったところ、X/Yの発現量の比・両者の総発現量において、F2Aが優れていることが明らかとなった。本年度は(b)Cre存在下のみで目的遺伝子を発現するレンチウイルスベクター、(c)Cre発現遺伝子改変動物の開発を進めた。(b) ウイルスベクターに搭載できる遺伝子の長さには制限があるため、『FLEX switch(Schnutgen et al., 2003)』を介した遺伝子発現の開発を進めた。293細胞を用いたin vitro実験では、レンチウイルスに搭載した『FLEX switch』が効率的に働くことが分かった。この『FLEX switch』を搭載した各種レンチウイルスベクターの開発、及びアデノ随伴ウイルスベクター・アデノウイルスベクターの開発も進めた。皮質錐体細胞特異的にCreを発現する遺伝子改変動物を用いて予備実験を行ったところ、in vivoにおいても『FLEX switch』が効率的に働き、細胞種特異的遺伝子発現に有用であることが明らかになった。(c) BAC DNAを用いた遺伝子改変動物の作出、及びMMRRCからの購入も進めた。現在までに数ラインにおいて、Creの特異的発現を確認している。今後は、本研究課題で開発したウイルスベクター・遺伝子改変動物を利用し、神経回路網の定量的解析を進めていきたいと考えている。
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