研究概要 |
昨年度の実験で,大脳皮質の臨界期を過ぎたところから出現する特徴的な細胞外基質であるDACSを構成していると想定されるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの精製は当初の精製プロトコールでは最終的なマススペクトロメトリーに供するだけのタンパク量が確保出来ないことが実験を進める過程で判明した。本年度は精製プロトコールを改良し,スタートするマウス大脳皮質の量を増加させると共に精製のステップをより効率の良いものに変更することにした。具体的には尿素を用いてマウス20匹分の大脳皮質を可溶化し、これを40%、60%の2段階の硫安沈殿を行い透析処理を行った後にDEAEセファロースを用いた精製(ここまではオリジナルプロトコールとほぼ同じ)を経た後に銅キレートカラムを用いた蛋白濃縮を行い、さらにハイドロキシアパタイトカラムの精製を行った。このあとコンドロイチナーゼ処理した標品をマススペクトロスコピーに供した。マス解析ではいわゆるレクチカンファミリーに属するブレビカンやフォスファカンに加えて,分泌型の糖蛋白であるテネイシンRが同定された。テネイシンRの成熟脳での機能的意義が不明であることもあり,同蛋白がDACSを構成している可能性についてインサイチュハイブリダイゼーションとCS56免疫組織化学の二重染色によって検証した。DACSの中心に位置するアストロサイトにテネイシンRのmRNAが高率に発現していることが明らかとなった。
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