SNAP-25はシナプス膜に存在するt-SNAREタンパク質で、開口放出によるシナプス前部からの神経伝達物質遊離に必須な役割を果たしている。我々は以前にSNAP-25のSer^<187>がプロテインキナーゼCによってリン酸化されると、神経伝達物質放出機能が促進されることを明らかにした。さらにマウスに冷水拘束ストレスを加えると、脳内のストレス反応に関わる部位を中心にSNAP-25のリン酸化が亢進することを明らかにし、SNAP-25のリン酸化がストレスへの適応機構に関わっている可能性を明らかにした。 今年度はSNAP-25のリン酸化を制御するシグナル機構を明らかにするため、マウス脳よりシナプトゾームを調整し、さまざまなレセプターのアゴニストを作用させた場合のSNAP-25やGAP-43のリン酸化の変化を特異的な抗リン酸化抗体を用いたイムノブロット法で調べた。シナプトゾームにフォルボールエステルを作用させると、SNAP-25のSer^<187>およびGAP-43のSer^<41>のリン酸化がいずれも亢進した。シナプトゾームにノルアドレナリンを作用させると、GAP-43のリン酸化は亢進したが、SNAP-25のリン酸化には有意な変化は認められなかった。PKCの活性化に関与するGqと共役するα1レセプターのアゴニストである(R)-(-)-Phenylephrine hydrochlorideを作用させた場合、SNAP-25のリン酸化は亢進しなかったがGAP-43のリン酸化は亢進することが明らかとなった。以上の結果からSNAP-25とGAP-43はいずれもPKCでリン酸化されるが、脳内では異なるレセプター系を介してリン酸化が制御されていることが明らかとなった。
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