研究概要 |
筋収縮を担う筋原線維の形成を引き起こすシグナル伝達機構はまったく不明である.そこでIGF-1シグナリングにより誘導される筋原線維のアクチンフィラメントとミオシンフィラメント形成のシグナル伝達機構を明らかにし,筋原線維形成の機構を包括的に解明することを目的とする. 筋原線維のアクチンフィラメント形成については,IGF-1刺激によって活性化されたPI3K-Aktシグナリングにより,nebulinのC末端にN-WASPが結合し,Z帯からアクチンフィラメントが形成されることをこれまでに明らかにしている.しかし,N-WASPはArp2/3複合体を活性化して,分枝状のアクチンフィラメントを形成することが知られており,直鎖状のアクチンフィラメントがどのようにして形成されるか不明であった.本研究では,N-WASPのWH2ドメインとnebulinのアクチン結合モジュールとの間でアクチン重合核が形成され,直鎖状のアクチンフィラメントが形成されることを明らかにした.これにより,これまでの概念を覆す新規の重合核形成機構が解明された.さらに,N-WASPが筋原線維のアクチンフィラメント形成と筋肥大に不可欠であることを,RNAiにより明らかにした. 筋原線維のミオシンフィラメント形成には,Rhoファミリー低分子量G蛋白質の活性化因子(GEF)にみられるDHドメインをもつobscurinがかかわっている可能性が示されている.ObscurinのDHドメインを含む断片Obs(SDP)は,5つのRhoファミリー蛋白質のうちRhoQのみに結合し,またRhoQのみを活性化した.筋原線維に発現させたObs(SDP)とRhoQはA帯に共局在した.RhoQのRNAiによりミオシンフィラメント形成が抑制された.さらにRhoQはIGF-1刺激により活性化された.これらの結果から,IGF-1刺激によりobscurinが活性化され,これにより活性化されたRhoQがミオシンフィラメント形成を引き起こすと考えられる.
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