研究概要 |
申請者は、数年前にメダカに大規模なランダムミュータジェネシスを施し(Taniguchi, et al. Genome Biol. 7:R116, 2006)、二年間の間に、約40の遺伝子の破壊体の作製を試みた。しかしながら、1つのミュータントを作製するコストが100万円と魚にしては割高である反面、変異体がヌルになるのは偶然に支配されること、変異導入頻度が数百キロ塩基に一つ程度と決して高くはないこと、変異の多くはイントロンやアミノ酸置換を伴わないサイレントな変異であることから、遺伝子破壊が成功する確率は50%とかなり低いのが現実である。本研究の目的は、トランスポゾンによる変異の沈降と、SAGEを応用した数珠状構造の形成という二段階の変異の濃縮を行うことにより、低コストな新たな変異同定法を開発するものである。本年度は、タイプ2制限酵素で切断可能になるように変異を導入したDNA断片を用いて、それが精製Muトランスポザーゼと複合体を形成することを確認した。また、変異DNA-Mu複合体が、二本鎖DNAのミスマッチ部位に結合すること、さらに、磁気を利用して回収したから沈降物から制限酵素によりミスマッチ部位を切り出すことが可能であることを証明した。しかしながら、提案後半部分にあるコンカテマーの形成、さらにそれをシーケンスするところまでは至らなかった。コンカテマー形成効率の悪さは、切断端が片側にのみ生じる5'突出末端であり、酵素的にfill-inした後、blunt end ligationを行うことによるためであると思われる。そのため、新たな制限酵素サイトを付与するなどして、この点を改善する。
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