研究概要 |
ヒト難聴のうち近年問題となっているものの一つに突発性難聴があり、その原因究明、治療法の開発などについての研究が進められているが、発症後の患者のアフターケアも重要な課題である。そこで本研究は難聴モデルマウスを用い、さらに交配実験を加え、聴力低下後のマウスに起こる様々な社会行動を経時的にモニターし、データ蓄積することを目的とした。加えて、行動モニタリングを行ったすべての個体から得られた各行動パラメータに対するQTL解析を行い、行動形質と遺伝子間の相関についても調査することも目的とした。 (1)突発性聴力低下モデルコロニーの作成と社会行動モニタリング:B6およびD2マウス間でF2マウスを作成し、脳幹刺激反応閾値を測定することにより聴力を評価し、正常聴力個体(12kHzの聴力閾値:10~30dB)と早期難聴発症個体(3ヶ月齢の12kHzの聴力閾値:10~30dB,3ヶ月齢の12kHzの聴力閾値:60~90dB)のオープンフィールド内での1:1でのビデオ解析により行動比較を行った結果、両者は1ヶ月齢においては行動に差異は認められなかったが、難聴発症後は行動差異が認められ、特にある一定の場所に留まる不動時間が難聴を発症した個体では長くなる傾向にあり、また、行動速度も遅くなっていた。加えて、聴力正常個体と難聴発症個体の接触回数も減少しており、特に、難聴発症個体からの接触回数が減少していた。 (2)社会行動の遺伝学的解析:(1)で調査した個体のDNAを抽出し、遺伝子タイピングを行った。 (3)JF1系統の社会行動モニタリング:JF1の聴力個体差を示した個体間で(1)同様に行動解析を行った結果、聴力損失個体と聴力維持個体間では僅かではあるが、不動時間において差異が認められたが、統計学的に有意な差異は認められず、今後より多くの個体で解析を行うことが重要であると考えられた。
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