今年度はトレハロースによる炎症抑制作用の応用に関して、in vivoモデルを用いてトレハロースによる炎症疾患の抑制効果を検証した。 クモ膜下出血後に生じる遅延性脳血管攣縮は、脳血管及び周囲組織中で血液に曝露されたことによって生じる炎症反応が重要な役割を果たしていると考えられている。脳血管攣縮に対するトレハロースの効果を検証するため、ウサギ脳槽内に自家動脈血を注入し、ウサギクモ膜下出血モデルを作製した。臨床条件を再現するために、血液を注入して3時間の後にトレハロースを脳槽内に投与した。コントロールとして生理食塩水を投与した条件では、脳底動脈周辺に血液が大量に付着し血管攣縮が起きていたが、トレハロースを投与した場合には血液付着は見られず、血管攣縮の発生も抑制されていた。トレハロースの構造異性体であるマルトースでは、トレハロースよりも血管攣縮抑制効果は低かった。さらに、ラット大腿動脈血管攣縮モデルにおいて、常に血液が存在する状態でもトレハロースは血管攣縮を抑制することが示された。 口腔細胞を用いてトレハロースが乾燥による細胞死を抑制するかを解析したところ、生理食塩水を用いた条件と比較して細胞死は有意に抑制された。 抗炎症抑制作用を有するNSAIDsには、胃潰瘍を誘発するという副作用が存在する。トレハロースとNSAIDの分子間結合品を作製し、ラットNSAID誘発性胃潰瘍モデルに投与した。トレハロースと相互作用しているNSAIDでは有意に胃潰瘍が抑制されることが明らかとなった。
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