研究概要 |
がん全体の治癒率は50%であり,進行がんの固形腫瘍ではわずか10%でしかない.がんによる死亡原因の多くは,がん細胞が他臓器に転移するからであり,転移を制しない限りがんは克服できない.転移はリンパ行性,血行性,播種性が考えられるが,特にリンパ行性経路上で最初に位置するリンパ節,いわゆるセンチネルリンパ節転移の診断は,がんの予後判定や治療方針の決定に重要な指針を与えることになる.CT,MRI,PET,超音波などの現在の医療診断装置では,サイズ感度が低いために,直径が1cm以下の部位を「がん」であると確定することは約65%の割合で判断できないものと報告されており,早急ながん確定診断法の開発が望まれる.本研究では、ナノバブルと超音波を用いた実時間血管構築法によって,直径1cm以下のリンパ節転移に対する早期がん確定診断法の開発を目的にする.本年度は以下の課題に取り組んだ.(1)長期安定性ナノバブルの開発:EPR効果を利用し血管造影を図るためには生体内に30分以上滞留するような安定性ナノバブルの開発を目指した.キトサンを脂質成分に加えることでマウス体内に30分以上滞留するナノバブルの製造に成功した.(2)腋窩リンパ節への転移の確認:申請者が開発したマウスリンパ節転移モデルの転移ルートを確認するために,インドシアニン・グリーン(ICG)をマウスの鼠径リンパ節に注射し,近赤外観察カメラ観察下で転移ルートを明らかにした.蛍光観察と病理解析を比較し,転移ルートがリンパ管であることを明らかにした.
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