1.本研究の概略を、弘前大学大学院医学研究科倫理委員会へ申請し、承認を受けた。 2.初年度は、2年目以降の研究で用いる脳卒中発症後4週における麻痺側と非麻痺側の手背の皮膚温差から、複合性局所疼痛症候群(CRPS)の発症を予測するスクリーニングテストの作成を行った。対象は脳卒中片麻痺患者55名(男32名、女23名)で、平均年齢は68.3±9.4歳であった。皮膚温の測定には赤外線放射温度計Fluke572を使用した。脳卒中発症後16週間のフォローアップ期間中に10名の患者がCRPSを発症した。CRPS群と、CRPSを発症しなかったnon-CRPS群では、年齢、男女比、麻痺側、病型、半側空間失認の有無、上肢・手指のBrunnstrom stageに有意差を認めなかった。脳卒中発症後4週における麻痺側と非麻痺側の手背の皮膚温差は、CRPS群の中央値が0.85度(0.4~1.1)、non-CRPS群の中央値が0度(-1.5~1.0)で有意差を認めた(p=0.0001)。ROCカーブを作成し、CRPS発症予測のための最適なカットオフ値を求めたところ、その値は0.35度であった。CRPS群では10名中10名がこの値を越え(感度100%)、non-CRPS群では45名中34名がこの値を下まわり(特異度76%)、手背皮膚温差とCRPS発症に統計学的に有意な関係が認められた(p<0.0001)。また陽性予測値は48%であった。
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