23年度は、22年度に引き続き被験者をビタミンC投与群とビタミンC非投与群に割り付け、ビタミンC投与群でCRPSの発症率が低下するかどうかの比較臨床試験を継続した。対象は、脳卒中片麻痺を初回発症し脳卒中専門病院に3週間以内に入院した患者の中で、研究参加に同意した50名である。脳卒中再発例、重度意識障害例、上肢に整形外科的疾患を有する患者は、対象から除外した。対象患者の平均年齢は62.3±12.8歳であった。50名を入院日時順にビタミンC一日500mgを投与するビタミンC群25名と乳糖500mgを投与するプラセボ群25名に振り分けた。なお群分けの情報は、処方医師とCRPS診断医師および患者にはブラインドにされた。両群とも脳卒中発症後3週から12週まで薬剤が投与された。CRPSの診断にはKozinの診断基準を用いた。浮腫はテープメジャーを用いて中指周径を測定し、皮膚温の測定には赤外線放射温度計を使用した。なおC即S発症が診断された被験者は、ビタミンCまたはプラセボの投与を中止し、CRPSの一般的な治療方法であるステロイド剤の内服投与を行った。結果として、脳卒中発症後10週間の介入期間中に13名の患者がCRPSを発症した。ビタミンC群とプラセボ群では、年齢で有意差(P=0.048)が認められたが、男女比、麻痺側、病型、半側空間無視の有無、感覚障害の程度、上肢・手指のBrunnstromstageに有意差を認めなかった。ビタミンC群とプラセボ群では、CRPSの発症がそれぞれ25名中7名(発症率28%)と25名中6名(発症率24%)で、発症頻度に有意差が認められなかった。以上よりビタミンC一日500mg投与は、脳卒中後CRPSの発症に対して、予防効果をもたないと考えられた。
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