平成22年度は、超小型ワイヤレス電磁マーカにより検出した手指の目標運動に、多連発パルス磁気刺激が特異的にトリガーされるシステムの開発を行った。具体的には、まず、運動への影響を極力排除するために小型化されたワイヤレス磁気マーカを運動測定対象の指先に装着し、磁気マーカの位置を磁気センサアレイにより磁気誘導の原理に基づき算出することで、手指の運動をリアルタイムで解析した。この場合に、パルス磁気刺激コイルが発生する強力なパルス磁場は、磁気センサに強いノイズ信号を誘発して機器を損傷する恐れがあった。実際、磁気センサアレイから30cm離れた距離に磁気刺激コイルを固定して、独自に開発したパルス磁場測定装置を用い磁気センサへの誘導起電力を測定すると1V以上の強いパルス電圧(2.5kHz)が観測された。一方、磁気マーカからの信号は100KHzであり、信号強度は10mV程度であった。そこで、シリコン半導体が0.7V以下の信号では動作しないという現象を活用することで、強い磁気パルス信号を遮断して、磁気マーカからの弱い信号のみを通過させるフィルター回路を開発した。このフィルター回路を使用することによって、強い磁気パルスの影響を受けずに、手指の運動解析を高精度で行うことが可能となった。本年度の研究では、上記の最新技術を利用することで、運動努力をトリガーとし、それに応じて多連発パルス磁気刺激を行うことができるシステムを構築し、正常ボランティアにおいて、システム全体の正常動作を確認した。
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