本研究は小学校の通常学級に在籍する特別支援教育の対象児(LD、ADHD、高機能広汎性発達障害等)に学級内で担任教師やスクールボランティアが作業療法の視点から支援を行い、作業療法が特別支援教育にどのような貢献ができるのかを事例を通し検証し、作業療法の効果と学校教育との連携の在り方についての方向性を示すことである。今年度は6事例(年度当初は8事例であったが転校により6事例となった)について作業療法支援を実施し、3年間の事例数は13事例(広汎性発達障害11名、ADHD4名、LD3名複数の診断名がある児童あり)となった。事例のIQは82~118であった。南カリフォルニア感覚統合検査、JPAN感覚処理・行為機能検査の結果、すべての児童に感覚統合機能の未熟さがあった。支援領域は行動7名、教科学習6名(書字4名、読字1名、算数1名)であり、行動面は子どもの行動チェックリスト(CBCL-TRF)、書字は協調運動については利き手の運動正確度テスト(南カリフォルニア感覚統合検査)と学年相当の漢字小テストの成績(1学期前半と3学期後半の比較)、読字は4音節清音20単語の読みのスピードと正答数、算数は1桁の加減算(繰り上がり繰り下がり含む)の成績により評価した。結果は、行動に関しては1名を除き支援効果が得られた。教科学習に関しては、書字の際の協調運動に関しては4名とも効果が得られたが、漢字学習に関しては1名で変化が見られなかった。読字については初読の困難さはあるものの、単元の途中から、スムースに読むことが可能となった。今回の作業療法の支援は、児童の困難さを担任教師がどのように理解し関わるのか、環境調整をどのように行うのかが中心であったが、13名中12名に支援効果が認められた。現在の学校教育法の中では、作業療法士が学校に入り児童に直接支援することは難しいが、教員との連携により、特別支援教育をより充実させることができる可能性があることを示唆した。
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