1.失語症者の社会参加に対する専門職や当事者への情報提供方法の検討 失語症者の社会参加が進まない原因として、当事者だけでなく失語症に係る専門職が失語症者のエンパワメントを促進する視点に欠けていることが考えられた。失語症者がリハビリ訓練だけではない、社会参加や社会生活に対する志向性をもつような情報提供や啓発が必須である。今年度、退院後の生活に役立つ福祉情報に関するパンフレットを作成し、愛知県内の病院に送付し、失語症者に情報提供されるように依頼した。 2。個人支援サービス提供システムモデルの構築とその検証 失語症者への個人支援は、失語症の症状などを理解するヘルパーでないと困難であることがわかってきたため、そのような人材がほとんどいないことから、モデルの構築や検証はできなかった。 3.会話能力スケールの開発 会話分析を活用した評価表を用い、言語聴覚士と失語症会話パートナー養成研修終了生の会話態度・技術の違いを比較した結果、「非言語的手段の活用」、「トラブル修正に協力的」、「他の伝達手段活用の促し」は、特に失語症者との会話の中で、理解面、表出面のトラブルの対策として有効であることがわかった。今後、失語症者のコミュニケーション支援を担う人材の養成および研修の中で、これらの技術を、行動変容として習得できるような実践的な指導が必要と判断された。 4.研究成果報告書の作成 3年間にわたる本研究成果を報告書にまとめ、失語症当事者団体、専門職などに配布することで、失語症者の社会参加やエンパワメントが促進されることが期待できる。
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