研究概要 |
中枢神経障害からの機能回復にリハビリテーションが重要であることに関しては、基礎実験や臨床現場において確認されてきた事実であるが、移植細胞の生着や分化に及ぼすリハビリテーションの実施効果に関して、現時点ではエビデンスが不足している。本年度は神経幹細胞移植の至適条件の検討を実施した。実験には体重約150gのF344系雄ラットを用いた。脳卒中非移植群(n=7)と脳卒中移植群(n=7)に分けた。すべての動物に対して、右感覚運動皮質にRose Bengal血栓性梗塞を作成した。脳梗塞作成1日後に神経幹細胞(100万個/個体)を静脈投与した。 移植神経幹細胞の培養 マウスES細胞から神経幹細胞への分化誘導および神経幹細胞の培養は、独自に開発したNeural Stem Sphere(NSS)法で行なった。すなわち、フィーダー細胞上で培養した未分化なマウスES細胞の塊(コロニー)を、実体顕微鏡下でガラスキャピラリーを使用して単離した。コロニーを非接着性ディッシュに移し、アストロサイト条件培地の中で浮遊培養して神経系細胞への選択的分化誘導を行い、神経幹細胞を含む球状の細胞集合体(NSS)を形成させた。浮遊培養4日目のNSSを接着性のディッシュに移し、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)存在下で数日間培養して、NSSの周囲に神経幹細胞を増殖させ、NSS周囲に遊走した神経幹細胞だけを回収し、bFGF存在下で増殖させ、均質な神経幹細胞を調製した。細胞は凍結保存し、移植時に、解凍して培養を再開し、1mlのDMEMに懸濁し、動物に移植した。脳卒中非移植群にはvehicle 1mlの静注処置のみを行った。移植1日後から免疫拒絶を防ぐため、cyclosporine A(10mg/kg/day,ip)を材料採取まで投与した。
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