研究概要 |
22年度は2種類の実験を行った.<実験1>6名の健常成人者を対象にして,筋疲労課題中における筋力,筋活動,大脳皮質感覚運動野領域の活動,頭皮血流量および血圧の経時的変化の関係を明らかにすることを目的とした実験を行った.最大収縮,最大収縮の50%,最大収縮の30%での右手指把持持続収縮を運度課題とし,課題遂行中の大脳皮質酸素化ヘモグロビン変化量(ΔoxyHb)を近赤外線分光イメージング手法により計測した.また,一拍ごとの血圧を連続して計測し,体循環と皮質血流との関係を解析した.その結果,3条件全てにおいて,ΔoxyHbと平均血圧の間で概ね0.2Hz以下の周波数帯域において0.5以上のコヒーレンス値が認められた.この傾向は,課題前後の安静期間と課題遂行期間のどちらにおいても観察された.このことから,近赤外線分光法で検出された大脳皮質ΔoxyHbの変動のうち,0.2Hz以下の周波数帯域には体循環の影響が含まれていることが考えられた.<実験2>6名の健常成人者を対象として,息こらえ遂行時における体循環の変動と頭皮血流量および大脳皮質酸素化動態の関係を明らかにすることを目的とした実験を行った.20秒間の息こらえ課題遂行中の,連続血圧と大脳皮質酸素化ヘモグロビン濃度変化(ΔoxyHb)のコヒーレンス値を算出した.その結果,0.4Hz以下の周波数帯域で0.6以上のコヒーレンス値が認められた.また,特定の位置では,被験者間でバラツキが少ない結果となった.このことから,近赤外線分光法を利用して算出された大脳皮質ΔoxyHbの値には,体循環の影響も含まれているため,皮質血液量の変動を観察するためには,これら体循環の影響を除去する手法を開発しなければならないことが明らかとなった.
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