研究概要 |
本研究は,超音波が持つ,超指向性,直進性,音としては聞こえないといった物理的な特徴を生かし,ラウドネスと両耳間差のみを視覚障碍者に伝えることにより,必要としない人には「聞こえない」誘導鈴を実現しようとするものである。平成21年度は,その基礎的検討として,誘導鈴が必要とされる空間における超音波領域の環境音の物理特性について実測調査を行った。東京駅構内及び周辺の7つの測定点で,サンプリング周波数を96kHzとして環境音を録音し,その物理特性について分析した。その結果,以下を明らかにした。(1)環境音の超音波領域における周波数特性は,ある特定のピークを持つことが多く,定常的な広帯域超音波はみられない。(2)36kHz以上の周波数では,卓越したピークはほとんどみられない。(3)スペクトログラムから判断すると,超音波領域の音は継続時間が短く,10秒程度続く場合もあるが,多くの場合1秒以下である。(4)ホームや道路交差点では,他の測定点と比較して,様々な周波数で超音波が観測された。時間軸上では,超音波成分の発生と自動車や電車のブレーキ音やスキール音の発生が同期している。(5)切符売り場前では,超音波領域において,いくつかの卓越した周波数ピークがみられるが,時間軸上では,切符自販機の小銭のお釣りの音や金属製ゲートの開閉音と同期しており,それらの音の継続時間は非常に短い。(6)地下街のように,特定の卓越した超音波がみられない場所もある。
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