本研究では、特に視機能に問題のある発達障害の原因の解明、早期発見、学習支援を目指し、問診や視機能検査のデータのデータベース構築と分析、視覚運動計測システムの構築、および、視覚認知機構の解明を目的とする。さらに、液晶タブレットとノートパソコンとによる視機能スクリーニング検査システムとを有機的に活用することにより、教育現場での簡便な視機能診断を実現も目指す。最終年度として今年度は、実施計画に基づき以下の主な項目に関して検討を行った。 1.昨年度に引き続き、STVPの検査項目に、ワーキングメモリ課題としてNバック課題、複雑な併合課題の新しい課題の追加を行った。 2.新しく導入した非接触式視線追尾装置によりSTVPの検査時の眼球運動計測を行ない、視線の動きから最適な課題配置方法の検証を行った。 3.STVP(Screening Test for Visual Perception skills)から小学校の1時限(45分)以内にできる課題抽出を行い、紙媒体によるSTVPの作成を行った。課題抽出は、大学生を被験者として難易度判定と共に15分以内にできる課題を選定した。その結果を基に、7課題77課題全53ページの紙版STVPを制作し、協力小学校1~6年の児童442名と、視覚発達センターに受診する115名の児童を対象に比較実験により妥当性の検証を行い、両軍の有意差を確認した。 4.視機能と重心動揺との関係を調べるために、重心動揺計測システムを構築し、視機能に何らかの主訴のある児童と健常児との間に差があることがわかった。 5.PC版STVPは、かわばた眼科付属の視覚発達センタで試験運用を開始した。 最終年度として、2012年2月にPC版STVPからタッチパネル検査を除いたPC版、紙版STVPを工学院大学人間科学・福祉情報工学研究室のHPから一般公開を行い、ダウンロードできるようにした。また、今までの成果の論文投稿の準備を開始した。
|