研究課題
日本古来の伝統芸能:狂言における「はこび」と呼ばれる歩行は、腰を落として膝を曲げ、重心の上下動をできるだけ少なくする動作である。本年は、この狂言歩行について、3次元動作解析を行い、そのバイオメカニカルな特徴を明らかにした.対象者(身長:1.69m、体重:85.3kg)は、狂言の山本東次郎家の筆頭で典型的な狂言歩行が可能な者である。動作は8mの実験歩行路において、通常歩行と狂言歩行をそれぞれ5試行ずつ行った。その際、動作を7台の赤外線カメラを用いたモーションキャプチャとフォースプレートシステムによって解析した。狂言歩行(0.37m/s)は、通常歩行(0.99m/s)の1/3程度の移動速度をもつ。重心高は通常歩行が平均0.91mの高さでサイクリックに上下しているのに対し、狂言歩行は平均0.89mで上下動がない。また、床反力は、通常歩行が上下方向で2相性(前後方向がマイナスとプラスの成分)をもつのに対して、狂言歩行は上下方向が1相性(ほぼ体重790N)でキック後も足を床にすらせて、下方向に平均65N、また前方向に平均24Nの力で床面を押していた。狂言歩行の関節角度は、特に膝関節が着地期を通じて、一定の角度で保たれていた。狂言歩行の関節モーメントは、股・足関節がほぼ同じパターンで、膝関節は大きな関節モーメントが定常的に発揮されていた。しかし、膝関節は機械的仕事が発揮されないために、身体を移動させるということには貢献しない。以上、狂言歩行:はこび動作の客観的な特徴が得られた。
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http://idaten.c.u-tokyo.ac.jp/~fukashiro/index.html