本研究は運動指導者が教えようとする動感的な指導目標像である代行形態を学習者にどのような方法と手段によって理解させるべきかという処方分析上の課題について例証を用いながら考察を進め、動感意識に有効な視覚的機器類の利用法ないし示範(模倣構成化能力)について検討を試みるものである。 現行の機器利用形態をみると、学習者自身の課題意識の有無によって映像の観察行為が大きく左右されることが明らかとなってきた。また、その課題内容も成果形態に向けられた場合とその前提となるコツの動感意識に向けられた場合では、観察方法に差が見られるようである。今年度は新たな種目に対する(ここでは鞍馬ないし平行棒を対象)画像の収録・呈示機器を設置し、前年度の跳馬における踏切局面を中心とした動感意識の学習内容と併せてこのような呈示機器の有効な利用法について考察してきた。そこでは予め、どのような動感意識を対象に確認を迫ろうとしているのかが学習者側に予め把持されていないと、どのような映像情報が撮影されていたとしてもそれを確認されることは殆どない。一方で、映像自体に客観的な差異が殆ど見られないような微妙な変化に対しては、その本質的な差の存在は映像よりも指導者の代行形態の適否によってより有効に伝えられることがわかってきた。
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