本研究は運動指導者が教えようとする動感的な指導目標像である代行形態を学習者にどのような方法と手段によって理解させるべきかという処方分析上の課題について例証を用いながら考察を進め、動感意識に有効な視覚的機器類の処方可能性と限界について明らかにするものである。 指導現場では映像機器の所有・設置に対する利用頻度は少ないものだった。客観的な分析目的よりも、学習者の自得利用環境(即時呈示システム)の構築で、積極的な利用例が見られた。体操競技、アイスホッケー、幼児の野外活動における例証により、学習者自身の課題意識の違いによって、観察内容が異なってしまうことが明らかとなった。また、その対象が行為の成果形態に向けられた場合とその前提となるコツの動感意識に向けられた場合では、観察方法に大きな差が見られ、後者は動感意識との比較のために繰り返し映像が再生され、動感対話や模倣の介入が特徴的であった。教わる側が自得方法論で成功する場合も珍しくなく、呈示の効果はこれらの違いを借問しながら確認することが必要であった。 このテクスト共有の可否は課題難易度で異なり、高度な踏み切り技術や幼児の動感促発を対象とした場合、実映像の呈示よりも指導者の潜勢自己運動能力に基づく代行化能力と促発処方化能力次第で正否が分かれた。一方、独習者のトレーニングの場合、自我と他我の分業を促進させるためには、本例の即時呈示システムの設置が目隙像の呈示を伴うことで極めて有効であることも示された。 映像呈示の効果は、見る側の動感代行化能力とその共有にかかっていることが明らかとなり、常にその存在を借問などで確認しながら呈示する、動感促発システムとしての機器の導入・利用法が検討されるべきである。この代行化分析が省略されたまま設備機器を導入しても、運動発生や技能習得に貢献できない限り積極的な利用は望めないことになる。
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