従来の運動処方では効果や効率を重視したため、運動強度や時間、頻度といった量的側面での処方がなされ、継続につながりづらいというデメリットがあった。これに対し、我々は運動者が自ら選択したペースでの運動により「快感情」や「満足感」などのポジティブな感情を増加させることを示し、このような運動者の欲求や態度を含めた運動処方の必要性を呈示してきた。そこで本研究では外的環境の変化が小さい実験室においても自己選択ペースが可能な装置を用い、ランニング時の生理的・心理的変化を検討した。その結果、自己選択ペースによるランニング中、被験者は生理的な運動強度としての心拍数あるいは走速度を変化させながら、感情をニュートラルに保ち走行していることが認められた。したがって、運動継続の要因の1つとして、生体内外の環境を調整し、運動ができるという運動の統制感が関わる可能性が示唆された。
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