骨格筋の酸素供給機構とその規定因子については不明な点が多い。我々は骨格筋内の酸素貯蔵体として知られているミオグロビン(Mb)に注目して、Mbに結合した酸素の利用動態を検出するシステムを構築した。このシステムによって、筋収縮時にMbからどれだけの酸素が解離しているか、つまり、Mbからミトコンドリアへどのくらいの量の酸素が供給されているかを計測できる。これまでの実験の結果、Mbに結合した酸素は収縮開始とともに解離し、それに付随して、細胞内の酸素分圧が急進的に低下することが明らかとなった。このようなMbを介した酸素供給機構が、身体活動レベルによってどのように変化するのかを明らかにすべく、本年度は持久性運動トレーニングモデルの実験を実施した。4週間の水泳トレーニングを実施したところ、下肢骨格筋の最大発揮張力及び最高酸素摂取量は有意に上昇し、L/Pは低下した。また、Mbからの酸素供給量と筋酸素消費速度との間には有意な相関関係が認められ、トレーニング後にはそれ以前(コントロール群)の相関関係を外挿するように上方シフトした。つまり、これらの結果は、持久性運動トレーニングによる筋酸素摂取速度の上昇は、筋収縮開始時における恥からの酸素供給量の増加によって補償されている可能性が示された。現在、こうしたMbが持つミトコンドリア呼吸活性への貢献がどのような機序によって生じているのかをタンパク質問相互作用の側面から解析を進めている。
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