研究概要 |
今日の職域では、職業起因性の疾病よりも生活習慣病が健康管理上の問題となっている。昨今の分子生物学の発展を背景に、遺伝的個人差の解析が可能となり、肥満症や高血圧症に関連した遺伝子に関する知見も得られつつある。本研究では、データ把握が比較的容易である職域集団を対象として用い、遺伝子診断結果を利用した健康指導・栄養指導に関する個別支援プログラムの開発を目的とする。H22年度の研究実績は以下のとおりである。 1.遺伝子診断と生活習慣病に関する断面調査 1)九州内のA企業(社員は1,100人)とB企業(社員は700人)に在職し、本研究協力の承諾を得た社員より20、21年度の健診データを入手。年齢とライフスタイルを調整後、β3アドレナリン受容体(Beta 3-Adrehergic Receptor;ADRB3)遺伝子多型(Trp64Arg)の頻度を分析した。その結果、Tip/Arg+Arg/Arg型は軽度肥満のみで関連が認められ、Argアレル保有者が軽度肥満の遺伝的背景となっている可能性が示唆された。肥満と密接な関係のある高血圧・脂質代謝異常のマーカーはADRB3遺伝子多型と関連は認められず、生活習慣と関連が認められた。 2)B企業の224名の社員のゲノムDNAを用いて、高血圧症と関連があるといわれているアンジオテンシノーゲン遺伝子多型(M235T)を分析した。その割合はMM型18%、MT型32%、TT型60%であった。 2.遺伝子診断を用いた介入研究 1)遺伝子診断を用いた介入研究遺伝子解析結果を用いた健康指導方法を作成。 2)飲酒行動を規定するALDH2遺伝子型を用いた節酒に関する健康指導を実施。
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