研究概要 |
近年問題となってきている運動能力の低下問題、キレルなどの暴力行為や抑うつ症状などの問題解決に積極的に取り組む一つの方法として、学校環境を整えことで、児童の心身の健康を守るというかかわり方が考えられる。その方法の1つとしての校庭の芝生化があげられる。校庭を芝生にする事によってケガを恐れることなく活動できる場となり,その結果,児童の遊びにも変化が生じると予想される。遊びは児童の様々な能力を発達させることが指摘されており,身体的・運動能力の発達のみではなく,知的発達,社会性の発達,人格の発達などの様々な能力を高める事にもつながることが期待できる。そこで、昨年に引き続き、(1)心身の健康、遊び場、遊び仲間の変化という観点から、校庭の芝生化が児童の心身の発達および、人間関係にどのような効果をもたらすかを大阪市内のT小学校で調査を行った。 本調査の結果は、従来筆者らの他校での調査で得られていた結果と様相を異にするものであった。つまり、従来の結果では、芝生化後、特に芝生化前にストレスの高かった群ではストレスにかかわる反応(怒り反応、多愁訴、睡眠障害、疲労感)などの低下が認められ、1年後でもその傾向が持続されていたが、今回の調査ではストレス反応は変化しないかもしくは増加するという結果になった。また遊びの人数は、及び遊び場に関しては少人数の遊びから大人数の遊びへと変化しまた校庭での遊びが増える傾向が認められた。この傾向は従来の結果を支持するものであった。以上のように従来と異なる結果が得られた一番大きな原因は、調査した小学校は、校庭を小学校、中学校で共有して使用しており、芝生化の維持が難しかったことから、十分な、芝生環境を提供できなかったことが考えられるが、その他の要因の関与の可能性も視野に入れる必要がある。
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