研究概要 |
加齢に伴い大動脈などの中心動脈の硬化度(動脈スティフネス)は増大する。動脈スティフネスの増大は心血管疾患の独立したリスクファクターとなる。動脈スティフネスは、遺伝的要因(すなわち遺伝子多型)の影響を受けることが明らかになっている。一方、習慣的な有酸素性運動は、動脈スティフネスを低下させる効果を持ち、心血管疾患の予防や改善に寄与することが明らかにされている。本研究では、動脈スティフネス増大の遺伝的リスクの重複が動脈スティフネスに及ぼす影響を検討することを目的とし、個々人に対応した運動療法開発のための基礎資料を提供することを目指す。今年度は、データ収集を行うとともに、収集したデータから、動脈スティフネスと遺伝子多型の関係を解析し当動脈スティフネス増大に関与する遺伝子型の組み合わせが、動脈スティフネスに及ぼす影響を検討した。動脈スティフネス増大に関連が認められたエストロゲンレセプターα(ER)-401T/C多型とアンジオテンシン変換酵素(ACE)I/D多型を組み合わせて、動脈スティフネスへの影響を検討したところ、ER-401TT型とACEII型を組み合わせて有すると、ER-401TC+CC型とACEID+DD型の組み合わせを有するよりも5.31倍(95%CI:2.17-13.01,p=0.0003)動脈スティフネス増大のオッズ比が高いことが示された。これらの結果から、動脈スティフネス増大に関連する遺伝子型の組み合わせを有すると動脈スティフネス増大のリスクが著しく上昇する可能性が示唆された。
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