研究課題/領域番号 |
21650187
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研究機関 | 北翔大学 |
研究代表者 |
風間 雅江 北翔大学, 人間福祉学部, 教授 (60337095)
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研究分担者 |
本間 美幸 北翔大学, 人間福祉学部, 准教授 (30295943)
八巻 貴穂 北翔大学, 人間福祉学部, 講師 (30364293)
本間 真理 札幌医科大学, 医学部, 兼任助教 (90423780)
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キーワード | 社会系心理学 / 介護 / ウェルビーイング / ナラティヴ / ライフストーリー |
研究概要 |
今日の高齢社会において多様な介護保険サービスが展開されているものの、家庭で介護あたる家族や、高齢者介護施設等で就労する介護職員の心身にかかる負荷は依然として大きい。要介護者の生活の質(QOL)の向上をめざすうえで、介護にあたる家族や介護専門職が自らの心身の健康を維持し、生きがい感や充実感をもって生活できるかどうかは極めて重要である。本研究ではこうした生きがい感や充実感、幸福感などを含む主観的な概念を指す「ウェルビーイング」に着目し、介護経験の積み重ねを通してウェルビーイングがどのように変化していくのか、それにかかわる要因は何かを明らかにすることを目的とした。 平成21年度はぐ介護家族については、高次脳機能障害者、および、認知症高齢者の介護にあたる家族を対象としたインタビュー調査を実施し、介護専門職については、高齢者介護施設に勤務する介護福祉士を対象としたインタビュー調査を実施した。 その結果、ウェルビーイングは、生活への満足等の認知的側面と、幸福感等の感情的側面から整理することができた。介護家族は、当初の混乱の時期を経て、介護経験が長くなるにつれ、介護負担や将来の展望を楽観的に捉えようとし、「今ここ」での満足を見いだし、家族の受障を自己成長の契機とみなす等、過去の苦難をポジティヴな経験として認知するように変化していた。介護専門職については、当初は職務へのやりがい感の喪失や離職願望といったネガティヴな認知や感情を抱く時期を経て、利用者の示す笑顔をはじめとした感謝や信頼の表現、職員間でのサポート、職務についての自己研鑽、職務とプライベートとの切り離しによるセルフケア等によって、ウェルビーイングを回復するというプロセスが示された。介護家族および介護職者に実施したインタビュー調査によって示された結果から、介護を通しての成長モデルを考案することが可能となり、今後この仮説をもとに質問紙調査を実施していく。
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