研究概要 |
平成21年度は,主に(1)防刃材料評価装置の設計・試作,(2)強度軽量材料の開発,(3)既存の防刃衣服の分解を行った.(1)については,米国の評価方法と同等のエネルギーで試験可能な装置を設計・試作した.アイスピック,刃物を対象物に高速で衝突させ,その際の破壊現象と物理量の計測を行うものである.実際の殺傷物衝突エネルギーは65J以上,衝突速度は2.83m/s以上を実現できた.また衝突実験時に荷重センサ,変位計により速度,力,変形の計測を可能とした.またこれらのデータから対象物の貫通に要したエネルギーと途中の負荷を計算から求めることが可能である.実際に異なる防刃材料で評価実験を行った結果,最終的な破壊強度だけでなく,破壊プロセスにおける微妙なエネルギー変化の特徴を捉えることができた.(2)については,カーボンナノチューブを用いた高強度軽量材料の開発を進めた.VGCFおよびSWCNTについてコンポジットを作成し,その物性を評価した.その結果,SWCNTを用いた複合材料の特性に優位性が認められた.今後,この材料をべースにさらに基礎実験,および開発を進める予定である.(3)については,市販されている防刃衣服を購入し,分解することで基本的構造を解析した.これらの防刃衣服は層構造を有しており,衝撃破壊に対する耐性を持たせるために薄型鉄板を使用していることなどが知られた.また温熱特性については評価装置を試作し,防刃衣服材料の基本的な熱的物理量を計測することが可能になった.年度末には警察庁を訪問し担当者と意見交換を行った.
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