研究概要 |
(1)試作した防刃性能評価装置を改良し,大荷重付与時の安定性・安全性向上のため刃物用の独自レールを設置し,大変位を測定できるようにセンサーを変更した.その結果,アイスピックなどによる突き刺し・衝撃における材料破壊の荷重と変位の計測が可能となり,算出した吸収エネルギーにより材料特性を評価する方法を確立できた。 (2)防刃効果を設計するために,貫通者断層について検討を進めた.カーボンナノチューブやセルロースウイスカー等の異方性超高強度ナノフィラーを繊維中に高分散・高配向させることで、繊維の引張強度のみならず耐刃性向上に必要な曲げ強度や耐フィブリル性を大幅に向上させることができた。繊維マトリックスからナノフィラーへの応力伝達をX線回折法によりミクロレベルで評価し、マトリックスーフィラー間の高い接着性が補強効果発現に重要であることを明らかにした。 (3)防刃被服内の温度を下げるため,シャツ地にチューブ状のホロー繊維を導入し,これにポンプで水を供給して温度降下させる被服の設計・試作・評価を行った.その結果,外衣に付属させたファンによる冷却服よりも効果的に被験者の体感温度を降下させることがわかった. (4)着用方法による防刃服の重量感と動作拘束感へ影響の評価を行った。ベスト型防刃服の締め付け量を段階的に変化させ、被験者に着用させ、立位、座位での伸び等計15種類の動作における身体の拘束部位を調査した。その結果、空隙の多い着用法では肩および上腕部に強い拘束感が見られた。密着させた場合は、さらに背上部と脇腹に動作拘束感が生じた。また、トルソーに着装時の圧力分布の測定を行った結果、肩部には面で当らず縁部が当っていること、締め付けにより背上部の圧力が上昇することが明らかになった。アームホール部、前肩部の形状の改良、防刃材のフレキシブル性の向上、バックルの張力調整機能の付与などにより、動作性が向上するものと考察された。 衣生活
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