研究概要 |
現在まで、ヒトに対するカビの曝露においては、室内に浮遊するカビ胞子数が測定され、アレルギーを含む呼吸器系症状との関連性が調べられてきた。しかし、そのカビ胞子(2~7μm)よりもさらに小さいカビ細胞片(<0.3μm)の存在については、全く考慮に入れられていない。そこで、私達はカビ胞子よりもさらに小さいカビ細胞片を"Fungal dust(FD)"と命名し、住環境における新しいハザードとして研究を開始した。 初年度は、その存在を補足するため、装置を組み立てた。HEPAフィルター、エアーポンプ、エアロゾル化チャンバー、アンダーセンエアーサンプラー、パーティクルカウンターをテフロンチューブでつなぎ、HEPAフィルターを通した空気を培養カビの集落表面に吹き付け、吹き飛んだ胞子と粒子をパーティクルカンウンターで大きさ別に数量測定しながら、アンダーセンエアーサンプラーでそれらを補足した。カビは、Penicillium crysogenum, P.paneum, Alternaria sp., Fusarium sp.を使用した。PDA培地にメンブレンを敷き、それぞれのカビを接種し、25℃、10日間培養した後、実験に供した。 パーティクルカンウンターは、0~1分後、6~7分後、10~11分後と間隔をあけて3回測定した。アンダーセンエアーサンプラーは30分間連続で補足した。実験は安全キャビネット内で実施し、コントロールの寒天培地では、パーティクルカンウンターの測定値はすべてゼロであった。カビ集落を使用した場合、4種類のカビの胞子と粒子はすべて、0~1分が一番多く、2回目、3回目と減少した。また、カビの胞子と粒子の数は、Penicilliumが多く、Alternaria sp., Fusarium sp.は非常に少なかった。実験の結果、P.paneum(0~1分)で、0.3-0.5μm:4913個,0.5-0.7μm:145個,0.7-1.0μm:175個,1.0-2.0μm:1181個,2.0-5.0μm:5195個であり、P.crysogenum(0~1分)で、0.3-0.5μm:5501個,0.5-0.7μm:415個,0.7-1.0μm:1255個,1.0-2.0:5201個、2.0-5.0:9541個であった。Alternaria sp.では胞子産生が少なく、0.3-0.5:41個、0.5-0.7μm:0個,0.7-1.0μm:0個,1.0-2.0μm:9個,2.0-5.0μm:36個であった。いずれのカビ種においても、また、1回目、2回目、3回目にかかわらず、03-0.5μm,1.0-2.0μm,2.0-5.0μmの数が多かった。これらの結果より、カビ胞子(2~7μm)よりもさらに小さいカビ細胞片(0.3-0.5μm)がカビ集落中に存在することが明らかになった。
|