研究課題
糖尿病はその予備群も入れると1000万人にもなる国民病である。糖尿病の薬には4種類があるが、β細胞増殖、再生作用のあるものは未だほとんど見つかっていない。これまでにベトナムで食されている水翁やフトモモ科の植物が、ストレプトゾトシン(STZ)により破壊されたβ細胞を再生させる成分があることが示唆されている。これらは直接的に食後血糖コントロールやインスリン分泌に働く作用と、糖吸収関連酵素やインスリンの分泌に関連する酵素(DPP4等)を解して間接的に作用している可能性が考えられる。そこで水翁の抗糖尿病効果のメカニズムを解明するために、水翁がSTZ-糖尿病マウス及びラットの遺伝「子発現に与える影響を調べた。その結果、GLUT2などの糖輸送に関わる遺伝子や、Irs2やIrs4などインスリンのシグナル伝達に関係する遺伝子の発現が水翁を与えた糖尿病ラット及びマウスで上昇した。また、インスリンの転写や膵臓の発生・分化に関わる転写因子(MafA、Ngn3、Pdx1)の発現が上昇した。次にヒト膵臓癌由来細胞株(MIA paca2)を用いて、まずインスリン分泌細胞への分化誘導を行った。続いてin vitroでSTZ糖尿病モデル細胞を作成し、STZで細胞傷害を受けた細胞が水翁によって再生または保護するか検討した。水翁を添加した群とコントロール群の間で生細胞数を確認したところ、有意な差は認められず、水翁にはSTZ傷害を受けた膵β細胞の再生機能は実証できなかった。さらに、これら食材の生理活性効果の要因として抗酸化物質の存在が推測されるため、この活性化合物の単離精製を行った。その結果、水翁およびTramのエチルアセテート、ブタノール、水による抽出画分は、特に高い抗酸化活性をもつことが明らかとなった。メタノール抽出画分では、脂質過酸化抑制活性も高く、特にTramにおいて、その活性が非常に高かった。また、Tramでは強い抗炎症効果も認められ、これらの植物の新たな生理作用が明らかとなった。
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