本研究課題においては、ネガティブ感情が摂食行動のコントロールを阻害するという考えに基づいて研究を行ってきた。 第1に摂食量を減少させる技法の効果に関する実験的研究に関しては、青山が担当し食事をコントロールすることが困難になる状況をかなり明確にすることができた。 第2にネガティブ感情が摂食行動を喚起する動物モデルの検討に関しては、畑が担当しストレス状況においてラットの食欲が増大することを示すことによって、動物の基本的な食欲のコントロールの中でストレスが身体的な要求以上に摂食行動を行わせるということが明らかになった。 第3にネガティブ感情が肥満治療プログラムにどのような影響を及ぼすかという点に関しては、佐藤が肥満患者の治療プログラムにおいてリバウンドを起こしてしまう患者の性格特徴やネガティブ感情の蓄積に関する調査を行い、これらの影響をどのようにコントロールするかということを検討した。 これらの研究の重要性は本研究者らによって、ネガティブ感情と呼ぶものが動物から人間に至るまでの食欲のコントロール機能を阻害するという事を明らかにした点である。従来の研究では摂食行動をコントロールすることに関しては、認知行動療法的なプログラムが中心となっており、そのプログラムに従って摂食行動をコントロールすることによってダイエットが行われると報告されてきている。しかし、この方法によって必ずしもダイエットが適切に行なわれ、あるいは十分な成果をみたらしているわけではない。それは本研究者らが示したようなネガティブ感情のコントロールが必要であるということと考えられる。 このような点から考えて本研究が示唆することの意義は摂食行動をターゲットとしたコントロールにおいてネガティブ感情を如何に処理し、摂食行動を阻害する要因を除去するかということである。この考え方に基づくプログラムの構築は現在行われつつあるところで、今後さらにこの方面の研究を展開して行くことが必要と考えられる。
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