研究概要 |
本研究は,非寄生性の線虫Caenorhabditis elegans(C.elegans)を利用した食品成分・微量金属の機能性の新規評価系を構築することを目的としている.C.elegansは,多くの分野においてモデル生物として利用されているが,培養する際に一般的に大腸菌を餌として用いることから,その影響は無視できない.今年度は,食品成分等の評価系として利用するためには,この問題点を回避することが重要であると考え,大腸菌を用いないC.elegans培養系を構築することを目標とした.培地作製を容易にするため,なるべく市販培地の利用を試みることとし,哺乳類から昆虫細胞用培地まで6種類の培地の適合性を調査したところ,昆虫細胞培地が最も良い成長を示すことが分かった.しかし,その培地にグルコースやアミノ酸を加えるだけではC.elegansの成長は発生初期の幼虫期で止まってしまったことから,さらに脂質,ビタミン類等を添加した結果,C.elegansを最終齢の幼虫期にまで成長させることに成功した.また,牛胎児血清を培地に添加することで,成虫にまで成長させることができることが分かった.さらにアガロースを加えたプレート培地も作製ができ,成長・産卵が確認できた.大腸菌を餌として培養した場合と比較して,C.elegansの成長速度は劣るものであったが,無菌的に培養できることは評価対象物質の影響を直接評価できるin vivo試験系が構築できる可能性を示唆するものである.次年度は,従来法と新規無菌培養法で生育したC.elegansの比較を行うとともに,実際に食品成分について検討する予定である.
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