本研究では、温室効果を実験室で検出することに挑戦する。大気中の二酸化炭素の増加に伴う地球温暖化が懸念される現在、温室効果は理科教育・環境教育にとって非常に重要な教育テーマの一つになっている。しかし、実際によく紹介されている温室効果の実験例には、温室効果の誤った理解に基づいているものや、児童・生徒に誤解を生じさせるものが多数を占めているのが実情である。これは、温室効果の原理が高校以下の児童・生徒あるいは教員にとって必ずしも簡単ではないこと、及び、地球規模の現象である温室効果を実験室レベルで再現すること自体が極めて困難であることに原因がある。そこで我々は、平成21年度からの2年計画で温室効果を原理通りに再現する実験器の開発に挑戦することにした。平成21年度は実験器のポイントとなる(1)地球大気のモデル化、(2)冷たい宇宙のモデル化、(3)安定した太陽のモデル化、の3点に取り組んだ。(1)は、二酸化炭素を封入しておくための容器の開発である。外壁をアクリルで、窓材を可視光でも赤外線でも透明な岩塩およびポリエチレンで作成した真空デシケータの開発を行った。(2)は、実験室の壁や天井からやってくる赤外線をカットするための実験環境の実現である。必要な外部温度を計算し、-30℃まで冷やせるフリーザーで実験器全体を覆うことで必要な実験環境を確保することにした。(3)としては、100Wの白熱電球に交流安定化電源(出力変動1%程度)を導入することでモデル化できる目処を立てた。ごく最近市販され始めたLED電球の導入も検討したが、実効的な光出力が不足していることが判明したため、当初の計画通り白熱電球を用いることにした。以上の他、兵庫教育大学附属学校において、温室効果や地球温暖化に関する児童・生徒の知識・関心についてのアンケート調査も実施した。
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