平成21年度の研究成果は、大別すると以下の3項目に集約される。 1.理科学習における学習者の科学観ならびに科学との関係性の変化の実態 2.学習者の科学との関係性を変化に寄与する学習指導上の手立ての要素の特定 3.学習者の科学観や科学との関係性を特定していく、調査ならびに分析手法の妥当性の検討 1.については、理科学習を経験する中で、学習者の科学観は、とらえ方自体に大きな変化は認められないが、理由づけ(=レパートリー)レベルで充実するという変化が認められたこと。しかし、これをもとにした科学との関係性の変化は、全体的には二分される傾向にあること。すなわち、約半数の学習者が科学に対して学習前よりも近接した関係を創り出しているのに対し、残りの約半数が科学との関係性を変化させない、あるいは関係を後退させる実態が見出されたこと。 2.については、理科授業における「習得した知識を活用し説明させる学習」の場を持つことが、科学観の育成ならびに科学との関係性の構築に対して、一定の効果を与える可能性を見出すことができたこと。 3.については、科学観や科学に対する情意を継続的に測定することから、科学との関係性の一側面を表現でき、特定できる可能性を確認できたこと。 本研究の調査対象は中学生であったが、この時期においてすでに約半数の学習者が、理科を学んでも理科や自然科学との関係性を改善できない傾向にある。この実態の要因や背景を探り、さらなる改善策を見出すことが次年度の課題である。
|