1.北里、富山、浜松医科の三大学に出向き、数学・統計学教育の内容・方法・制度について面談調査を、また島根他の3大学に関しメールやネットによる調査を行った。その結果を要約すると、各大学の歴史やマンパワーの相違から数学・統計学教育は多様に展開されているが、一方で線形代数分野の選択科目化など内容の選別と必修枠縮減の進行、単位制度の実質化(1単位科目の増加)、板書スタイル授業の重視などの共通の傾向が見られた。収集したシラバス・テキストや教材・統計学習のためのデータ等は今後調査予定の大学の分と併せて、更に分析を継続する。共通教育方式をとらない医系学部での数学教育担当者間で相互に交流・情報交換が行われることが、これまでなかったこともあって、その重要さを各担当者が共に認識できたことは大変に意義のあることであった。 2.数学・統計学教材の可視化・シミュレーションの活用に関して、数式処理ソフトウェアを用いて微分積分学分野ではサイクロイド振子の等時性やバネの減衰振動他を、線形代数分野では線形写像や固有ベクトル等を、初等整数論分野ではビリヤードを模すことにより算術の基本定理をそれぞれ解説するアニメーションを作成した。またCTの原理をパソコン上でシミュレートするプログラムを作成し、板書スタイルと手書き入力を含むパソコンによるプレゼンテーションの融合を考えた教材配列を試作している。これらに加え文献整備を進めて、数理生物学や疫学等の分野からその本質を損ねることなくかつ単純化して提示できる数理モデルを追求するなど、医系学部での教育に適したコンテンツの充実を図っている。
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