本研究は、特許情報を教材化することによりバイオテクノロジー教育の深化を図るとともに、知財教育の新たな展開を試みることを目的としたものである。本年度は、昨年度に引き続き遺伝子関連および酵素および酵素精製関連特許について、「PLATORIS」を用い、全文ファイルを含む関連特許情報の収集を、さらに行った。また、米国特許についても検索を行い、「請求項」について翻訳を進めた。この中から、学生実験で行っている題材について、教材化の検討をおこなうと同時に、試行も行った。特にその中で、過去に学生実験で試行していたPCRに関しての演習問題については、より実際に近づけるため、特許公開公報ではなく、修正後の特許公報の請求項とした後、3回生の実験(物質科学IV)のPCR実験実施後、請求項と実験との相違について問うレポートとして課し、その回答を集計解析した。回答では、例えば、請求項を分けてそれぞれについて判定を求めたのであるが、全体あるいは一部のみでの判定が多く、さらに要素ごとに分けて判定を行っていないこともわかった。そのため、来年度は、さらに文章を分解し、それぞれの要素について、判定理由を書かせることにした。また、言葉の意味の理解不十分も見られたため、この点も注意を促す必要があることがわかった。しかしながら、実験を振り返りながら回答していることはわかったので、実験の理解を深める効果があったものと思われた。来年度はこの点についての効果測定を行いたい。なお、この結果は、論文として発表予定である。
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